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かみ合わせに関する事例

余談ですが、以前に私が勤務していた歯科医院(以下A医院)での話です。

他院(以下B医院)で下あごの片側(仮に左側とします)の奥歯にインプラント治療を行い、上下の奥歯のほとんどをセラミックのクラウン(かぶせ物)で治療していた患者様がご友人の紹介で私の当時の勤務先A医院にいらして下さいました。お話を伺いましたところ、治療を行ったB医院のホームページに写真付きで掲載されているとの事でした。さぞかし渾身の治療だったのかと思います。
では一体なぜB医院のご自慢の治療結果である患者様がご友人に相談し、A医院に来ることになったのでしょうか?
主な訴えは非常にシンプルなもので「奥歯で噛みにくい」でした。
ちなみに治療を行ったB医院は都心の一等地にあり、噛みあわせ(咬合治療)を得意分野としているようでした(とある理由でB医院のホームページを隈なく拝見させて頂き、その時に私が勝手に感じた印象です)。
患者様はこのB医院のホームページを見つけ出し感銘を受けたため、A医院を紹介して下さった患者様を誘い、1時間以上もかけてB医院に通ったそうです。
先に記載しましたが左右の奥歯のほとんどを治療されておりますので、かなり頻繁に長期に渡って通われたことは容易に想像できました。
これだけ熱心に遠方から通って頂けてB医院の渾身の治療結果である患者様は、なぜ奥歯で噛みにくい状態になってしまったのでしょうか?
理由は簡単でした。
下あごの左側に入っているインプラント体の位置が悪いため、インプラントの上物(人工的な歯)が上あごの歯と上手く噛めない状態になっていました。
下あごの左側の奥歯2本がインプラントで、この2本は上あごと全く噛んでいない(接触していない)状態でした。ただし、肉眼で明らかに隙間があるというレベルではありませんでした。

この時点でB医院は患者様に対して「インプラント体の埋め込んだ位置が悪いので、一度インプラント体を抜いてから治療のやり直しをさせて下さい」とは言えなかったのでしょう。
その結果、左側の噛み合わせが基準になってしまいます。やり直しをしない以上、左側は噛んでいない状態です
右側は当然噛めます。なぜならご自身の歯が残っているからです。
しかし噛み合わせの問題からか、右上の奥歯をわざと右下と接触しない程度に調整してセラミックのかぶせ物を装着していました。わざと右側上下の歯を接触させないのは、推測の域を出ませんが、右側だけを接触させると左側に明らかな違和感が生じるからでしょう。ただでさえ口の中は非常に敏感に出来ています。
結果としてB医院において左右ともに奥歯で噛まさない咬合の患者様が誕生しました(患者様に対して大変失礼な言い回しであることを深くお詫び致します)。
何とか口腔内の改善を図るために患者様にインプラントメーカーを尋ねたところ、「分かりません」とのご回答を頂きました。パンフレットや保証書などにも記載がないとのことでした。立派な治療計画書や契約書は拝見させて頂きましたが、インプラントメーカーの記載はございませんでした。その結果、患者様に使用しているインプラントメーカーが知りたい一心で全く興味はないのですがB医院のホームページを隈なく拝見させて頂く経緯となりました。しかしメーカーは記載されておりませんでした。
この治療結果がB医院のホームページに掲載されていることを考えますと同様な患者様が多数いらっしゃることは容易に想像できます。

A医院では他院でインプラントを入れた位置が悪く、上物の歯が上手く噛めない状態になり相談されるケースが増えてきた印象を受けました。
インプラント治療に関しましても最新の方法が出てきていますが、それに伴い犠牲となった患者様が多数いらっしゃることを忘れないで頂きたいと思います。

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